レジェンドサーファーたる所以

ゴミが散乱するビーチ。

ビニール袋やペットボトル、ストローやオムツまでもが転がっていることもある。しかしそんな光景をサーファーが目にすることは稀だ。

なぜなら乾季の東海岸、雨季の西海岸にはサーファーは近寄らないからだ。

乾季の東海岸、雨季の西海岸ではオンショア、つまり海側からの風が吹きつけるため波のコンディションが整いづらくなる。

実はこのオンショアが吹き始めるとビーチはゴミで覆い尽くされることになる。海を漂っていたプラスティックゴミなどがビーチに漂着するからだ。

それが隠しようのないバリ島の裏の顔でもある。

 

つい30年前までは女性も上半身裸で暮らしていたバリ島にはプラスティックなんてものはなかった。

お皿はバナナリーフだったし、手提げ袋はヤシの葉を編んだものだった。

そういったものはその辺りに捨ててしまってもそのうち勝手に自然に戻っていく。いや、それらは元々自然のものだから自然に戻るもない。全くの無害だったのだ。

しかし時代が進み、安価で大量生産ができるプラスティックがこの島にも入ってくるようになった。

それでもこの島の人々は以前と変わらずに使い終わったらその辺に捨ててしまっている。長いバリ島の歴史を考えるとプラスティックに触れたのはつい最近の出来事だ。ある意味仕方のないことなのかもしれない。

しかしそのツケがまわり、今では街や川、海にまでプラスティックゴミが氾濫している。自然に戻らないプラスティックの行く末だ。

それでも汚れていく街やビーチに心を痛める人もほとんどいないのが現状なのだ。

 

今日、ボクはバリ島東海岸のシークレットスポットに足を運んだ。

まだオフシーズンなので誰もいないだろうと思いつつポイントの目の前まで行くと白い袋を片手に黙々とビーチに散乱するゴミを拾う男の姿が目に入ってきた。目を凝らすとその姿に見覚えがあった。

バリ島を代表するレジェンドサーファー、ワヤン・ピッチャさんだったのだ。

 

ピッチャさんはWSLのジャッジとして世界中を飛び回っているので年に数えるほどしか顔を合わすことがない。しかも彼はクタのローカルなので普段東海岸で見かけることはほとんどない。

「ええっ、ピッチャさん!」

「ああ、ケイちゃん」

いつものように陽気な笑顔を向けてくれた。

軽い雑談の後ボクも一緒にゴミを拾い始めたわけだが、しばらくすると「ケイちゃん、風くるからサーフィンしておいでよ」とどこまでも優しい。

 

彼は一人、黙々とゴミを拾っていた。

誰のためでもない。

誰に見られているわけでもない。

PRやイメージ作りでもない。

しかも自分のホームポイントでもない。

ただ汚れていくビーチに心を痛め、黙々とゴミを拾う姿がそこにあったのだ。

バリのサーフィンの歴史を切り拓いたワヤン・ピッチャさんがレジェンドサーファーとしてバリニーズのサーファーたちから絶大なる信頼を得ている理由がわかった気がした。

 

有本圭

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