最先端を走る『サーファー』

すっかり中年になった今でも車にサーフボードを積んで日々海へ向かっている。

20代のあの頃と同じように。

 

どうやらボクの基本的人格構造はあの頃とたいして変わっていないようだ。

しかしボクを取り巻く環境は大きく変わった。

結婚し、家族ができ、日本を後にしてバリ島で暮らしている。

そしてかつて共に波を追っていた仲間の半分くらいはサーフィンをやめてしまった。

 

ちなみにボクはサーフィンをやめてしまおうと思ったことは過去に一度もない。

コンテスト生活に嫌気がさしたり、マンネリが原因で数ヶ月サーフィンから離れたことはあったが、やめようとは決して思わなかった。

たとえ人生が堕落しドン底の時期でさえサーフィンだけは続けていた。むしろサーフィンが心の支えになっていた。

波に運ばれている瞬間の恍惚感。

波を乗り終えた後の爽快感や達成感。

身体が海水に包まれるだけで心が和らいでいく。

だからサーフィンをやめてしまう人の気持ちがうまく理解できなかった。

え? なんでやめちゃうの?

つーか、サーフィンってやめられるものなの?

ボクはある種の驚きを持って海に背を向けてしまった彼らと接していた。

 

ずいぶん昔の話になるが、サーフィンをきっぱり辞めて会社に勤め始めたかつての友人が若かったボクにこんなことを言った。

「サーフィンが楽しいのはわかるよ。でも 決して生産的とはいえないよね。何かを生み出しているわけでもない。どちらかというとオナニーに近い。いや、ほとんどオナニーだ。自己満足だけの世界だ。

そんなもんにいつまでもハマっているなんて大人とは言えないよ。もっと建設的なことをした方がいい。もう大人なんだからさ。」と。

ボクは強烈な反発を覚えた。

しかしその時はうまく言い返すことができなかった。

きっと心のどこかでは『彼の言う通りなのかもしれない』と思っていたのだろう。

「うるせーな」と発するのが精一杯だった。

 

今はこんな風に思っている。

サーフィンは確かに非生産的かもしれないしオナニーなのかもしれない。

しかし少し大げさに表現すると『我々サーファーは生命の源である海のエネルギーと調和し、一体になろうと常に試みている存在である』と言うことができる。

お金や土地などより多くの物質を所有していることが尊敬に値するとされている今の世の中から次のフェーズに昇華するとしたら、サーファーの共通意識が人類全体の指針となるのではないかとボクは心密かに思っている。

 

サーファーだけに限らず、お金や物質ではなく自然と調和し一体になることを人生の目的としている人たちが理想とする世界を想像してみてほしい。

海や山などの自然にダメージを与えるようなことを避けるシステムを考え出すだろう。

地球と共存していくことをベースに、教育を含む様々な分野についてメスを入れていくはずだ。

子供たちにもっと自然と触れ合える時間をつくるだろう。

大好きなことを生き生きと自由にできる時間を増やそうとするだろう。

サーファーたちが共通して持つ価値観こそが今の物質至上主義の世の中にある種の『気づき』をもたらす可能性だって十分あると思うのだ。

 

スターバックスやマクドナルドといった大手企業が地球環境に配慮してプラスティックのストローを廃止することを決定した。

主要7カ国首脳会議G7においてもプラスティックゴミの与える海洋汚染についての話し合いが始まっている。

一般企業でさえ環境への配慮が徹底され始めている。

有給休暇だって以前より取りやすい雰囲気へと変わりつつある。

世の中は少しずつそちら側の方向へと動き始めているではないか。

その動きのずっと先に、ボクらサーファーはいる。

もうすでにそこにいるのだ。

 

こんな視点から物事を見てみると、サーファーから醸し出される空気感がこれからの世の中の潮流になるのではないかと期待してしまう。

いや、子供たちのためにもそういう世の中へと移行していってほしい。

そのためにもまずはボクらができること。

Keep Surfing!!!

有本圭

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