アジアツアー、決闘の結果は・・・

まったく人間という生き物は欲深いものだ。

欲を出すと負けるぞ、などとエラそーに自分で書いておきながらベッドに入ると欲望のままに妄想を膨らませてしまっていた。

「ほら、オトーはこれからゼッケンをもらってね、そうそう、あそこの波でサーフィンをするから。よーく見ておくんだぞ。よしよし」

セミファイナルまで勝ち上がると明日、つまり学校が休みになる土曜日にヒートが行われるので娘バリ子に雄姿を見せてやれることになるのだ。

 

そしてさらに妄想は膨張していった。

そうだな、優勝のコメントはどうしようかね。やっぱり英語とインドネシア語と時々日本語を混ぜちゃって、できればちょっとしたウケを取りつつ。

ウンウン、そうね、バリ子を一緒に表彰台にあげちゃったりしてね。

ヒュ〜。

もう完全に妄想の世界でウットリしながら深い眠りに落ちていったのだった。

 

そして今朝。

「今日はな、この俺様がクオーターファイナルを戦うわけだからその雄姿を目に焼き付けるがいい」などとホザきつつド天然嫁をクタビーチに呼びつけた。

いかにもイヤイヤといった表情でビーチに現れたド天然嫁であったが、「やるからには勝ってよ」とケツを叩かれた。

 

さあ、ヒートだ。

ボクはゼッケンブルー。

クオーターファイナルからは1対1の決闘スタイルとなる。

ゼッケンレッドの選手はフィリピンから参戦しているBenitoだ。昨年度のツアーチャンピオンらしい。

彼の姿を見たド天然嫁がすかさず「あの人一番うまい人じゃん」とプレッシャーをかけてくる。

確かにヒート前のセッションでことごとくセットの波に捕まえてはコレデモカ的なサーフィンを見せつけていた。

「そんなもんやってみなきゃあわからんぞい」

ボクはあくまでも平静を装いながらヒートに臨んでいった。

 

ヒートのホーンと同時にいかにも馬力のあるパドルで波を捉えて5.88ポイントを叩き出されてしまった。

この展開、一番イヤよね。

相手は落ち着くし、こっちはアセル。

でもボクはあくまでも平常心風の態度を崩さなかった。

その平常心風のボクが最初に選んだ波がしょーもなかった。

2.7ポイント。

おいおい、話にならんやん。

全く相手にならないかわいそーな人にだけはなりたくないぞ。

その一心で次の波で4.7ポイントのスコアを出して、なんとかくらいつく。

そしてバックサイドの波で5.77ポイントを出し、さあいよいよ追いついてきたぞ、と思った矢先だった。

セットの素晴らしい波が彼に向かってきているではないか。

ボクは半ば呆然と口を開けながら彼のライディングに見入ってしまった。

ハングテン、ハングファイブ、さらにターンをしてハングファイブ。そしてドーンとリップにボードを叩きつけてフィニッシュ。

8.0ポイント・・・

あ〜〜、無情。

甲子園風にいうならば、『有本圭の夏は終わった』ということになった。

バリ島の夏は終わらないんだけどね。

 

ヒートを終えて海から上がるとド天然嫁が呆れたような表情で近寄ってきて「ケイくん、全然闘志がないじゃん。なんでもっと波に乗んないのよ。やる気ないじゃん。ぜんっぜんダメっ」

いやっ、あれでも全力を出したつもりで・・・

ボクのか弱い言葉は彼女の耳には届かなかった。

 

まあそりゃあこの大会に参加するためだけにフィリピンからバリ島に遠征してきた前年度チャンピオンに、まったく準備もせずになんとなくの流れで大会に飛び入り参加するようなふざけた姿勢のボクが敵うはずもないか。

納得だ。

しかしながらやはり負けるというのはしんみりと悔しいもので、この悔しさが今後のサーフィンのモチベーションとなってくれるような気がする。

まず何が足りないって。

体力ですよ、体力。

沖にパドルバックした時点で肩で息をしているようでは戦いの舞台に立つ資格などないと真摯に思った。

応援してくださった皆さん、ありがとうございました。

これが今のボク実力というやつなのです。

顔洗って出直します。

 

有本圭

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