恐ろしきLCC

半ば緊急的な帰国をしていた。

しかもスケジュールは今までにないほど短かった。娘バリ子とのバリ島ふたり暮らしもしばしの休戦といったところだった。

ド天然嫁との再会を果たし、2ヶ月ぶりの家族フルメンバー揃い組での時間を大切に過ごした。せっかくの日本滞在なので会いたい人がたくさんいたのだが、そこはこらえてパパ役に徹した。バリ島ではパパママ役を同時にこなしていたので久しぶりの分業制にホッと一息つけたというわけだった。

 

予定の1週間の滞在は恐ろしいほどあっという間に過ぎていった。

出国ゲートで再び涙のお別れをし、イミグレで出国スタンプを押されると一気に現実へと引き戻されていった。

涙が頬を伝うバリ子に「またすぐに会えるんだから」と強く抱きしめた。お腹のあたりにバリ子の温かい涙を感じながら絶対に寂しい思いはさせないぞと決意を新たにした。

またバリ子とのふたり暮らしが始まるのだ。バリ島での暮らしにアレコレと思いを馳せた。

しかし定刻を過ぎてもなんの動きもない。いつまで経ってもゲートが開く気配がない。

どうした、遅延か? まあしょうがないか、LCCだから。

今回はエアアジアのバリ〜成田直行便での移動だったのだ。

20分ほどするとゲートが変更になりましたとのアナウンスが入った。バリの空港ではゲート変更がわりと頻繁にあるのだが、日本の空港では珍しいことだ。ナニカがあったのだなと嫌な予感がしたが、その予感は見事に的中してしまった。

ゲートを移動する途中の電光掲示板には『欠航』のふた文字が並んでいた。

欠航? 思わず口をついて出た言葉に「なにケッコウって」と不思議そうにボクの目を覗き込んでくるバリ子。

「ケッコウっていうのは飛行機が飛ばないってことだよ。今日はバリに帰れないかもしれないよ」

するとバリ子は「えっ!」と目を輝かせた。

嬉しいのか?

そうか、それはそうか。やはりママと離れたくないのだ。

その瞬間、ボクの心はくっきりと決まった。

もし欠航であれば滞在を数日伸ばしてしまおう。何日か学校を休ませれば済むことだ。これも神様からのプレゼント。そんな風に思うことにした。

指定されたゲートに行くと案の定「機材トラブルにより欠航です」とのアナウンスが入った。要するに飛行機の故障?

短い休みを取ってバリ島旅行を楽しみにしていた人たちからは落胆と怒りのようなオーラが感じ取れたが、ボクとバリ子は「まあいっかっ」と微笑み合って日本への再入国の手続きをした。

「どうせならもうちょっと日本にいようね」

翌日に振り替えるという選択肢もあったが、あえて帰国を1週間伸ばすことにした。

免税店で購入したお土産が没収になったのは納得できなかったが、これもやはりLCCだから仕方ないかと割り切るしかなかった。

 

飛行機の故障によりオマケの1週間を有意義に過ごすことができた。それはそれでよかったと言える。欠航に対する怒りのようなものはない。しかしLCCにはLCCなりのリスクがあることを思い知った。

聞けばその前の週にも機材トラブルで欠航があったとか。また乗客率がある一定に達しない場合も欠航になるという話も耳にする。タイトなスケジュールの中でのLCCはやはりそれなりにギャンブル的要素をはらんでいるようだ。

 

それにしても「またすぐに会えるから」というボクの言葉はそれから3時間後には現実のものとなっていた。

「だろっ、だから言っただろ。すぐ会えるって」と得意げになって発したボクの言葉は再会を抱き合いながら喜び合っていたふたりには届かなかった。

有本圭

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