まさしの『ただし』

「えっ、それじゃあSaltwater playersを閉めるってこと?」

「まあ、そういうことだね」

「それはもったいないよ。だってこれまで1500記事以上書いてきたわけだからSEO的見地からしてももったいないって」

「いいのいいの、そういうのよくわかんないし。とにかくイチからやり直したいの」

 

納得いかないといった表情を浮かべたまさしは2010年8月10日に共に前身のSaltwater playersを立ち上げたパートナーなのだ。

彼は東大を卒業後に一度も就職せずにフリーランスとして世間を渡り歩いてきた凄腕ウェブマスターだ。

しかし東大まで卒業しておいてフリーランスとはもったいないのではとボクのような下界の者は思ってしまう。

だって、ボクだってある意味フリーランスなわけだから世間的には同じポジションではないか。(内容的にはかなり違うが)

東大という切り札があれば官僚にだってなれたはずだし、一流企業にだって就職できたはずだ。

実際東大の彼の仲間たちから「まさしは天才だ」と言われているほどのキレ者だ。

キレキレの頭脳を活かせば何にだってなれたはずなのだ。

でも彼は自由を選んだ。

変わり者っちゃー変わり者。

そんな彼だからこんなボクでも気安く付き合っていけるわけだが。

 

「でね、リニューアルをまさしにお願いしたいわけさ」

「そっか。ケイさんが決めたんだったら協力するよ」

おお、よかった。

再スタートを切るには彼の助けが必要なのだ。

「ただし」

出たっ、ただし。

「ただし、リニューアルしたサイトで小説を書くこと」

「えっ!」

「前から言ってるでしょ、小説書いてって。それをやってくれるなら協力するけど」

おっと、いきなり激しくハードルを上げてきた。

確かに彼は以前から事あるごとにボクに小説を書くようにとプレッシャーをかけ続けてきている。

そのつどノラリクラリとかわしてきたわけだが、とうとう壁際に追い込まれた気分だ。

「小説って簡単にいうけどさ、書いたこともないし」

「いやいや、前に書いていた『少年おじさん』。あれ、小説でしょ」

「あ、あれは小説っていうか自伝なんだけどな」

「でも自伝的小説的だよ。まあ、最後まで書ききってないけどね」

たしかに。

以前書いていた自伝『少年おじさん』は少々リアルすぎて登場人物のプライバシーに関わってくるので途中で挫折したという経緯があった。

「私小説にすればいいんだよ。実話をもとに多少脚色してさ。自伝にしたから逆に難しかったんじゃない?」

ん〜、たしかに。

「私小説として書き直してみたらいいんだよ」

ん〜。そうか。

「ケイさんが書くって約束するなら協力するし」

「わかった。やるよ。やりますよ」

まさしは満足げにうなずいた。

ということで私小説として書くハメになってしまった。

まさしの「ただし」はなかなか恐ろしいものであったのだ。

有本圭

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