謎のSプロデューサー現る

アグン山と波。雨季のバリ島です

ことのあらまし

昨日、Saltwater magazineとして新たなる船出をした。(その記事はこちら

でも、今までとどこがどう違うのよ、という疑問が浮かんできているようなのでSaltwater magazineの構造的な話しておかなければならないだろう。

このウェブマガジンはボクこと有本圭がヘンシュウチョーとして君臨することになる。

編集長というほどエラいものではないのでヘンシュウチョーとさせてもらった。

ヘンシュウチョーなのだけど、エラそーに君臨はするのである。

で、ヘンシュウチョーの上には当然もっとエラい人がはびこっている。

はびこっている、なんて書くと怒られてしまいそうだが実際に君臨するボクの上にはボクを管理するさらにエラい人がはびこっているのだ。

その人のことを仮にSプロデューサーとしよう。

彼は30年以上にわたってアパレル業界を渡り歩いてきたツワモノである。

ボクがアパレル業界にいた頃に知り合ったのでかれこれ20年来の付き合いとなる。

その当時、Sプロデューサーはボクにとっては雲の上の存在だったが、時を経て今では気安く酒を酌み交わす仲となっているのだ。

さっさとアパレル業界を去ったボクであるが、Sプロデューサーは今でも第一線の誰もが知っているような今をときめくアパレルブランドと取引を続けている。

そんな彼と赤坂のとある洒落た蕎麦屋でヘベレケに酔いながら新生Saltwater magazineの構想について軽く盛りつつ熱く語った夜があった。

「ボクはやるんだ!」

力強く拳を固めたボクに対して、「おっし、そんだったらその話、俺の会社で引き受けてやる」とSプロデューサーは酔いどれの座りきった目でボクを見据えた。

「いやっ、そういうつもりではなく」

と言いかけたボクを右手で制し、「いいから、俺が引き受けるから」と引かなかった。

何をどんな風に引き受けるのかその時にはよくわからなかったが、とにかくその場は「それじゃあ」とお願いするほかなかった。

まあこういうことはヨッパライ同士のやりとりでは日常的によくあることなのだ。

おそろしきSプロデューサー

鏡越しのSプロは完全なるビール党なのです

鏡越しのSプロは完全なるビール党なのです

そして翌日、「何だっけそれ、そんな話あったっけ? はははっ」と曖昧に笑い合うという風にはならず、「早速昨日の内容を企画書にまとめて俺の会社にもってこい」となってしまったのだ。

ボクはわかりやすく後ずさりした。

前夜、何をどう熱く語っていたのか細部がうまく思い出せなかったのだ。

日本酒や焼酎といったアルコール度数の高い飲料をガバガバと喉を通していたので記憶が曖昧で断片的だった。

でもどうやら記憶が定かではないのはボクだけではなくSプロデューサーも同じだった。

電話口で「んで、結局最後どうやって帰ったっけ?」などと聞いてくるSプロ(面倒なので略してしまおう)の声に自信の無さが滲んでいた。

そんなわけで、とにかくヤケクソ気味に頭の中にある構想というか夢想というか妄想のようなものをパワーポイントに打ち込んでいくことにした。

想像を膨らませていくうちに企画書というよりむしろ夢想書もしくは妄想書という気配が色濃くなってしまったが、まあそれはそれでいいのだ。

とにかく頭の中にある『やりたいこと』を全部吐き出してみることにした。

 

「んー。いいじゃん、これ。よしやっぱりうちで面倒みることにしよう」そういうとSプロは満足そうに何度も頷いた。

「面倒みるっていうのは具体的にはどういうことなのでしょうか?」

ボクは勇気を出して疑問に思っていたモンダイの核心に迫ることにしてみた。

しきりに引き受けるとか面倒をみるなどと口にしているSプロだったが具体的な意味がイマイチよくわからなかったのだ。

「だからさ、これって実現するにはお金がかかることでしょ。サイトのリニューアルとか取材とか旅とか広告とか。そのへんをウチで面倒みるって言ってんの」

「えっ、マジですか??」

「男に二言はない」

「おおおおー」

ボクは思わずSプロの手を握っていた。

「ただし」

「ただし?」

やはり「ただし」はあった。

「俺の指令には全面的に従うこと」

「えっ、と言いますと?」

「あのね、オマエの企画、いいよね、いいとは思う。だけどさ、これ、オマエ楽しそうだよね。とことん楽そうだよね。オマエが楽しいことばかりやっていて世間の人たちが楽しいと思う? ちょっとは苦しんでもらわないと、面白くないじゃん」

「と、言いますと?」

急速に不安が胸に広がっていく。

「例えばさ、サーフボード抱えてヒッチハイクでバリを一周するとかさ」

「えええっ」

「食料を持たずに無人島で1ヶ月サーフィンするとかさ」

「ええええっ、そっち系? 若手芸人じゃないですかそれ。若手でしょ、そういうのやるの。ボク、45歳のそこそこオッサンですけど」

「バカヤロ、俺から見たらオマエなんてまだまだ若手だろ」

「マジっすか〜」

「苦しんでる姿ってのは見てて面白いもんなんだよ」

「ええええええ」

Sプロはそんなボクの焦り切った姿を見て高らかに笑った。

 

世の中というのはやはりそうは甘くはない。

今のところ無茶な指令はまだ出されていないが、いつ何を言ってくるかとビクついている。

ヒッチハイクとかそういった体を張る系は勘弁願いたいのだが、背に腹は変えられないということでSプロに身を預けることにした。

というわけで、このウェブマガジンはボクの気まぐれで更新したりしなかったりということは決して許されないという構造になった。

お金をかけてしっかり取材し、クオリティの高いコンテンツを提供する、というのがSプロから出された最初に出された指令だったのだ。

やらなーアカンのです。

有本圭

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